大阪地方裁判所 平成7年(ワ)10956号 判決 1997年2月28日
原告
野原博
被告
株式会社砂川工務店
ほか一名
主文
被告らは、連帯して、原告に対し、金三六万五三九五円及びこれに対する平成五年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
原告のその余の請求をいずれも棄却する。
訴訟費用は、これを二〇分し、その一を被告らの負担とし、その余を原告の負担とする。
この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。
事実及び理由
第一請求
被告らは、連帯して、原告に対し、金一〇九九万六五五二円及びこれに対する平成五年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
第二事案の概要
本件は、信号機による交通整理の行われている交差点で普通貨物自動車と原動機付自転車とが衝突し、負傷した原動機付自転車の運転手が、普通貨物自動車の運転手に対し、民法七〇九条により、右運転手を雇用する会社に対し、自動車損害賠償保障法三条により、それぞれ損害賠償を求めた事案である。
一 争いのない事実等(証拠及び弁論の全趣旨により明らかに認められる事実を含み、( )内に認定に供した証拠を摘示する。)
1 交通事故の発生
(一) 発生日時 平成五年七月一〇日午後六時三〇分ごろ
(二) 発生場所 大阪府摂津市鳥飼西五丁目五番先路上
(三) 加害車両 被告谷口昌弘(以下「被告谷口」という。)運転、被告株式会社砂川工務店(以下「被告会社」という。)の所有の普通貨物自動車(登録番号大阪四一そ五八六九、以下「被告車」という。)
(四) 被害車両 原告運転の原動機付自転車(以下「原告車」という。)
(五) 事故の態様 原告車が、道路の左端を走行していたところ、原告車と同方向に走行していた被告車が交差点で左折しようとして原告車に衝突した。
2 責任
(一) 被告谷口は、左折するに際し、左方を注視確認すべき義務を怠り、本件事故を発生させた過失があるから、民法七〇九条により、原告が被つた後記損害を賠償する責任がある。
(二) 被告会社は、被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであつて、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条により、原告が被つた後記損害を賠償する責任がある。
3 原告は、本件事故により、口唇挫傷、門歯欠損、左下腿下部挫傷、左肩、両膝打撲、頸椎捻挫の傷害を負い、次のとおり通院治療を受けた。
摂津ひかり病院 平成五年七月一〇日から同月一二日まで(実通院日数二日)
佐子整骨院 同月一〇日から平成八年一一月八日まで(平成七年三月六日までの実通院日数四六三日)(乙第五の一から四まで)
至誠歯科 平成五年七月一六日から平成六年一月二六日まで(実通院日数二八日)(乙第八の一及び二)
大阪医科大学附属病院 平成五年七月一四日から平成八年二月二日まで(実通院日数八七日)(甲第八の一及び二、乙第六の一から第七の二まで)
藤原整骨院 平成六年一月一四日から同月一八日まで(実通院日数二日)
朋愛会サンタマリア病院 平成八年二月一三日から同年六月一八日まで(実通院日数一〇日)(甲第一一)
近畿大学医学部附属病院 平成八年一〇月一一日通院(甲第一四)
森本病院 平成八年七月二日から平成八年一二月一七日まで(実通院日数二一日)(甲第一三の一及び二)
4 損害てん補
原告は、被告らから、本件事故につき、二一五万九四九〇円の支払いを受けた。
二 争点
1 原告の症状固定時期、後遺障害の有無
(原告の主張)
原告は、本件事故により前記の傷害を負い、外傷性頸部症候群により後頸部から背部にかけての鈍痛を残して治療中であるが、右障害は自賠法施行令二条別表後遺障害等級表の第一二級一二号(以下等級のみを示す。)に該当し、平成七年三月二日に症状固定した。
(被告らの反論)
原告は、自動車保険料率算定会の事前認定において非該当とされたように、後遺障害はない。
原告の症状固定日は平成六年一月末日と考えるべきである。
2 損害
(一) 治療費 三七〇万〇四一〇円
(二) 交通費 八万六二四〇円
(三) 休業損害 八四一万九六九六円
(原告の主張)
原告は、本件事故当時、グランプリ電子株式会社に勤務していたが、本件事故による受傷のため、平成五年七月一〇日から平成六年一月二六日までの二〇一日及び平成六年一月二七日から平成八年一二月一七日までの間に四〇二日通院したことにより、合計六〇三日稼働不可能となつた。本件事故に遭わなければ、原告は、右期間中、少なくとも平成五年賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計・三〇歳から三四歳の男子労働者の年額平均賃金を下らない収入を得ることができたはずである。
(被告らの反論)
原告は本件事故後も清掃業に従事していたから、グランプリ電子株式会社におけるビデオのダビングという軽作業には従事できたはずである。
(四) 後遺障害による逸失利益 三一一万三七五七円
前記1のとおり、原告(昭和三八年七月一二日生まれ)は、本件事故により、第一二級一二号に該当する後遺障害を残すこととなつたから、症状固定時とされた平成七年三月二日から五年間に渡つて、その労働能力を一四パーセント喪失したので、前記(三)の収入を基礎にして、新ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、右期間の逸失利益の現価を算定すると、右のとおりとなる。
(五) 慰謝料 四七〇万〇〇〇〇円
(1) 通院慰謝料 二五〇万〇〇〇〇円
(2) 後遺障害慰謝料 二二〇万〇〇〇〇円
(六) 弁護士費用 一〇〇万〇〇〇〇円
(七) 原告は、被告谷口に対し、民法七〇九条に基づき、被告会社に対し、自賠法三条に基づき、被告らから支払いのあつた二一五万九四九〇円を右損害合計額から控除した残額の内金一〇九九万六五五二円及びこれに対する平成五年七月一〇日から支払済みまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。
3 寄与度減額
(被告らの主張)
原告には右膝や左下腿部にもともと治療を要する疾患があつたから、寄与度減額をすべきである。
4 過失相殺
第三争点に対する判断
一 症状固定時期、後遺障害の有無、
1 証拠(甲第一から第四まで、第七、乙第三の一から第八の二まで、第一一の一及び二、証人森本昌浩、原告、弁論の全趣旨)によれば、
原告は、本件事故当日である平成五年七月一〇日及び同月一二日の二回、摂津ひかり病院で治療を受け、同病院の医師は、頭部エツクス線検査を実施し、口唇挫傷、左肩、両膝、左足打撲、歯欠損の傷病名で、当初約一〇日間の通院加療を要する見込みである旨診断したこと、
原告は、同月一〇日に、本件事故前から膝や下腿部の施術のため通院していた佐子整骨院に赴いた際、医師から足をどうしたのか訊ねられて、本件事故にあつたことを話し、以後も、同整骨院に通院し、頸部捻挫、右膝部打撲、左下腿部挫傷の傷病名で、鍼治療、ホツトパツク、赤外線、マツサージ等の施術を続けたこと、
原告は、同月一六日から平成六年一月二六日まで、至誠歯科に通院、治療を受け、同日治癒した旨診断されたこと
原告は、平成五年七月一四日に佐子整骨院の医師の指示で大阪医科大学附属病院の整形外科を受診し、同日の診断によれば、原告は頸椎変形-、頸椎四、五に圧痛++、可動域正常、ジヤクソン徴候-、スパーリング徴候-、イートン徴候-、上腕神経叢圧痛-等で、同病院整形外科の富永通裕医師(以下「富永医師」という。)は、原告につき、傷病名、頸椎捻挫、左下腿下部挫傷、口唇挫創(門歯欠損)で同日より向こう二週間休業、通院加療を要する見込みである旨診断し、保存的療法でよいので近くの整骨院で通院加療を続けるよう指示したこと、原告は同年一二月一五日にも同科で受診し、レントゲン線検査では異常がなかつたこと、
原告は、平成六年一月二九日に、佐古整骨院の医師の紹介で大阪医科大学附属病院の麻酔科を受診し、問診票の症状欄には、特に疲れやすく、肩や首筋が凝つたり痛んだりする旨、症状の経過欄には、少しずつ良くなつている等を記載し、医師に対し、後頸部から背部に鈍痛がある旨訴えたが、同日行われた神経学的検査によれば、ジヤクソン徴候-、スパーリング徴候-、右側頸髄第六、第七神経支配領域の知覚低下が認められ、頸部及び肩部共に可動域には制限がなかつたこと、同病院麻酔科の森本昌弘医師(以下「森本医師」という。)は、原告に対し、局部注射、頸部硬膜外ブロツク、右星状神経節ブロツクを行つたこと、
森本医師は、原告の症状につき、外傷性頸部症候群の中で、交通事故による過伸展などが原因となつた椎骨動脈周囲神経叢の異常が原因であろうと判断していること、
原告は、以後、同病院の麻酔科に通院を続け、局所浸潤注射、右星状神経節ブロツク、投薬等の治療を継続的に受けたこと、森本医師は、原告の訴える痛みにつき、受診時ないし最も痛みが強かつた時を一〇点満点とするペインスコアを記録し、同年二月一六日のペインスコアは八、同年四月二一日は六とされたこと、同年五月二六日には特変なしと診断され、同年六月九日のペインスコアは八、同月二三日は、特変なし、ペインスコアは八とされ、同年七月七日、同月二八日、同年八月四日、同月一一日、同月一八日にも変化がない旨診断されたこと、
同年四月二一日、森本医師は、被告訴訟代理人の照会に対し、原告は頸部硬膜外ブロツク施行後約一週間は著明な自覚症状の改善を得るが、その後再び憎悪をみる旨、初診時には、業種によるが、頸、肩、上肢の筋肉に負担をかける仕事は不可能と思える旨回答していること、
同年五月一一日、富永医師は、被告訴訟代理人の照会に対し、原告は、初診時に、頸部痛があり、頸部筋緊張が亢進し、後屈時疼痛が増幅、左下腿下部に軽度の腫脹と圧痛があるが、頸椎部エツクス線像には著変なく、四肢に神経症状がなかつた旨、湿布薬と鎮痛消炎剤、筋弛緩剤、ビタミン剤の投薬を行い、以後は整骨院で保存的治療(鍼や電気)をするように指示した旨、初診時には職業の内容によつて就労は可能であつた旨、平成六年五月一一日時点では、治療の継続の必要は特になく、原告が症状固定を申し出れば症状固定できる状態であり、本人が就労しようとすれば就労可能である旨回答していること、
同年八月九日にMRI検査が実施され、頸椎五、六間にわずかに椎間板ヘルニア形成を認め、硬膜曩方軽度圧迫、全体に頸索に比し脊柱管がやや狭い印象を受けるが、他に明らかな異常徴候は認められない旨診断されたこと、
原告は、その後も通院し、同様の治療を続けたが、カルテの記載上は、変化ないし特変がない旨の記載が続き、ペインスコアは同月二五日は九、同年九月二九日は六、同年一〇月六日は一〇、同年一二月八日は九、同月二二日は八、平成七年一月五日は九、同月二六日は九であつたこと、
同年二月二四日、富永医師は、森本医師の依頼で、原告を診察し、外傷性頸部症候群で、整形外科的には神経学的徴候を認めず、精神身体的症状が主であり、症状としては固定していると見て差し支えない旨診断したこと、
森本医師は、原告につき、同年三月二日の診察に基づき、同日付けで自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書を作成し、症状固定日「平成七年三月二日」、傷病名「外傷性頸部症候群、腰椎症」、自覚症状「後頸部から背部にかけての鈍痛、腰部の鈍痛」、精神神経の障害、他覚的症状および検査結果「初診時より神経学的徴候は認めないが、後頸部から肩に強い圧痛点を認める」、障害内容の憎悪・緩解の見通し等「今後、症状の憎悪緩解を繰り返す可能性は大きかが、現時点では症状固定と考える」等と診断したこと、
原告は、その後も大阪医科大学附属病院麻酔科の通院治療を続けたこと、等の事実を認めることができ、右認定に反する証人森本及び原告本人の供述部分はいずれも採用することができない。
2 前記1の事実によれば、原告については、整形外科の富永医師が、平成五年七月一四日に向こう二週間休業、通院加療を要する見込みである旨診断し、平成六年五月一一日時点で治療の継続の必要は特になく、原告が症状固定を申し出れば症状固定できる状態である旨判断していること、原告が同病院麻酔科で平成六年一月二九日以後受けた治療内容、これに対する痛みの程度を含めた症状はほぼ変化がないまま推移したこと等に鑑みれば、原告の本件事故による傷害は、平成六年一月末日ごろに症状固定したと解するのが相当であるというべきである。
3 原告は、前記のとおり、後頸部から背部にかけての鈍痛の後遺障害を残して症状固定したものと解されるところ、右後遺障害については、頭部CT、頭部エツクス線検査、MRI検査、神経学的検査等に異常が認められていないけれども、森本医師が原告の症状につき、外傷性頸部症候群の中で、交通事故による過伸展などが原因となつた椎骨動脈周囲神経叢の異常が原因であろうと判断していること等に鑑みると、原告の右後遺障害は第一四級一〇号に該当すると解するのが相当である。
二 損害
1 治療費 九六万六七八四円
前記一で認定したように、原告の傷害は平成六年一月末日に症状固定したと解され、同日までの摂津ひかり病院、至誠歯科及び大阪医科大学附属病院の治療費については本件事故と相当因果関係が認められ、また、佐子整骨院での施術については、富永医師が原告に対し整骨院で通院加療を続けるように指示したことに照らせば、症状固定時までの分は必要性が認められるというべきであるが、他方、原告が本件事故前から同整骨院に通院して施術を受けていたことも勘案すれば、その施術費の五割をもつて本件事故と相当因果関係のある損害とするのが相当と解されるところ、証拠(甲第六の二、第八の二、乙第四の一及び二、第五の一及び二、第六の一から第八の二まで)によれば、事故当日の平成五年七月一〇日から平成六年一月末日までの治療費は、摂津ひかり病院分が五万一四〇〇円、至誠歯科分が三九万一〇〇〇円、大阪医科大学附属病院が六万八一九〇円、佐子整骨院分が四五万六一九四円(一円未満切り捨て。以下同じ。)であるから、合計九六万六七八四円となる。
2 交通費 一万三五二〇円
証拠(甲第五の六から八まで、乙第六の二)によれば、原告は、平成五年七月一〇日から平成六年一月末日までの間に本件事故により負つた傷害の治療のために、至誠歯科に通院するため九七二〇円、大阪医科大学附属病院に通院するため三八〇〇円(一回当たり七六〇円)の合計一万三五二〇円を要したことを認めることができる。
3 休業損害 一四万三八二一円
証拠(乙第一〇の一から三まで、原告、弁論の全趣旨)によれば、原告(昭和三八年七月一二日生まれ)は、本件事故の約一年前から的場株式会社に勤務して午後八時から午後一〇時まで清掃業務に従事していたこと、平成五年七月七日にグランプリ電子株式会社に就職し、ビデオの録画をする仕事に従事し、試用期間を経過すれば正社員になる予定であつたが、本件事故による受傷により、平成五年七月一〇日に退職し、二万九二八〇円の支給を受けたこと、本件事故後も的場株式会社の仕事は続けていたこと等の事実が認められ、これらの事実に前記一の事実を併せ考えれば、原告は、平成五年賃金センサス第一巻第一表の産業計・企業規模計・学歴計・三〇歳から三四歳の男子労働者の年額平均賃金五〇九万六六〇〇円程度の五割程度の収入を得ることができたところ、本件事故により負傷し、平成五年七月一〇日から症状固定日である平成六年一月末日までの二〇六日間につき、右収入額の一割程度の休業損害を被つたものと解する。
(算式)5,096,600×0.5×0.1÷365×206
4 後遺障害による逸失利益 三四万七九七〇円
前記一2のとおり、原告は、第一四級一〇号に該当する後遺障害を残して症状固定し、右後遺傷害により症状固定日である平成六年一月末日後三年間にわたり、その労働能力を五パーセント喪失したものと解するのが相当であるから、前記3の年収額を基礎にして、新ホフマン式計算法により年五分の割合による中間利息を控除して、右期間の逸失利益の現価を算定すると、右のとおりとなる。
(算式)5,096,600×0.5×0.05×2.731
5 慰謝料 一三〇万〇〇〇〇円
原告の受傷部位及び程度、治療経過、後遺障害の内容及び程度、年齢、その他の諸事情を考慮すれば、慰謝料としては、通院分五〇万円、後遺症分八〇万円が相当である。
三 寄与度減額
被告らは、原告には右膝や左下腿部にもともと治療を要する疾患があつたから、寄与度減額をすべきである旨主張し、証拠(原告本人)によれば、原告は本件事故前から、膝や下腿部の治療を受けていたことが認められるけれども、右の事実によつては、これが本件事故による治療の期間や後遺障害の程度に寄与していることを推認するに足りず、被告らの主張は理由がないといわざるを得ない。
四 過失相殺
証拠(乙第二、被告谷口、原告、弁論の全趣旨)によれば、本件事故現場は、東西に伸びる道路(以下「東西道路」という。)とほぼ南西から北東に伸びる道路(以下「南北道路」という。)とが交わる信号機による交通整理の行われている交差点であつて、東西道路は歩車道の区別があり、東西道路は幅員約一四メートルの四車線で、本件事故現場付近の道路は市街地に位置し、最高速度は時速四〇キロメートルに制限され、路面はアスフアルト舗装され、平坦で、本件事故当時は乾燥していたこと、本件交差点付近における東西道路の進路前方の見通しは良いこと、被告谷口は、本件事故当時、東西道路の歩道寄り車線を西進し、本件交差点で南北道路に左折する予定であつたが、前方が混雑していたので、本件交差点の手前で、前方を見るため進行方向右寄りに寄り、歩道から約二メートルの距離の辺りを時速約一〇キロメートルで走行していたこと、別紙図面<1>の地点で方向指示器により左折の合図をし、<2>で左折を開始し、<3>で<ア>の原告車と衝突し、はじめて原告車の存在に気づいたこと、本件事故当時対面信号は青色であつたこと等の事実を認めることができ、右の事実によれば、本件事故に関する原告及び被告谷口の過失割合は、原告の一、被告の九と解するのが相当である。
五 前記一の原告の損害額合計二七七万二〇九五円から前記四の過失割合により過失相殺による減額を行うと残額は二四九万四八八五円となり、前記争いのない事実によれば、原告は、被告らから、本件事故による損害賠償の既払い金として、二一五万九四九〇円を受領したのであるから、右金額を前記過失相殺による減額後の残額から控除すると残額は三三万五三九五円となる。
六 弁護士費用
本件事案の性質、認容額その他諸般の事情を考慮すると、弁護士費用は三万円が相当である。
七 以上のとおりであつて、原告の本訴請求は金三六万五三九五円及びこれに対する平成五年七月一〇日から支払済みまで年五分の割合による金員の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、その余は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言について同法一九六条一項をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(裁判官 石原寿記)
別紙図面